仏様が見る私

コロナ禍が私たちの日常生活に大きく影響し始めてから今年三月でちょうど2年が経ちました。お寺の行事、家族の集まり、友達との関係など色々な面で生活に影響が出ましたが、今振り返ってみると、子供たちが学校に行くことが出来ず、一年以上続いた家でのディスタンスラーニングが一番のチャレンジだったような気がします。自分の仕事、そして家の事や三男の相手をしながら、子供のオンライン学習のサポートもしなければならず自分の力の限界にぶつかることが多々ありました。子供がやる気がなくてもやらないといけない勉強をさせて、やりたくてもやってはいけないいたずらをさせないという管理は日々の課題でした。

家も学校も子供を健康に育てるために色々なルールがあります。子供たちは去年の秋から学校に戻っていますが、最近、子供たちは学校から帰って来ると学校でルールを守っていない子のいたずら話で盛り上がっています。

仏様は私たちの心を育てるために戒律という生活の原則として守るべきルールを与えました。本来、僧侶は200以上の戒律がありますが、僧侶ではない在家の方のために次の“五戒”が説かれています。

  • ()(せっ)(しょう)戒(生きものを殺さない)

生きものを殺ないだけではなく、互いに傷付け合わないこと、いじめをしない。

  • ()(ちゅう)(とう)戒(盗みをしないこと)

盗みをしないだけではなく、物を惜しまない、人を(だま)し取らない。カンニングをしないもこれに入ります。

  • ()(じゃ)(いん)戒(よこしまな交わりをしない)

よこしまな交わりによっていろいろな人を傷つけることや、セクハラをしないことも示す。

  • ()(もう)()戒(うそをいわない)

うそをいわないだけではなくて、悪口をいわない、二枚舌を使わない、真実に反して言葉を飾りたてない、うわさを広がらない。

  • ()(おん)(じゅ)戒(酒を飲まない)

お酒だけではなく、麻薬などさまざまな中毒と依存症になるものを控えることを示す。最近では子供達のインターネット依存症やテレビゲーム依存症もよく耳にします。

私の子供たちはさすがに自分のいたずらの話はしませんが、私自身の小学校時代を思い出しますと、確かに自分なりのいたずらをしていました。私がいたずらをした時、両親や先生は私を見捨てるのではなく、一生懸命正しい方向に進むよう私のために色々な注意をしてくれました。

大人になってからは両親からの注意は殆どなくなりましたが、いたずらな心は簡単に消えるものではありません。上記に述べてある五戒に背くことを“五悪”といいます。私自身の日頃の生き方を改めて振り返ってみますと、五戒を守っている時より、五悪を犯している時の方が多いような気がします。自分の日頃の姿に気づいて仏様はこの私をどう見るだろうと思う時がありますが、仏説無量寿経に次の仏様の言葉があります。

「わたしがそなたたち天人や人々を哀れむのは、 親が子を思うよりもなお一層深い。 だからわたしは今この世界で仏となって、 五悪を打ち負かし、 五痛を取り除き、 五焼をすべてなくして、 善をもって悪を攻め滅ぼし、 迷いの世界の苦しみを抜き去り、 ()(とく)を得させて、 安らかなさとりの世界に至らせるのである。 」(仏説無量寿経、巻下)

親はいたずらをする自分の子供を見るとき、見捨てるのではなく、その子のために一所懸命になって正しく指導しようとします。仏様も同じように、日頃いたずらが多い私たち人間を見て、私たちを見捨てるのではなくて、徳を与えようとさとりの世界に導いてくださっているのです。

南無阿弥陀仏