11月は感謝を表す特別な機会がたくさんあります。サンマテオ仏教会では、11月17日(日曜日)に仏教会が仏法を聴聞でき、お念仏を喜ぶ道場として永遠に続くようにとの願いを持って、これまで力を尽くしてきて下さった代々のご門徒さまを偲ぶ永代経法要が行われます。11月24日(日曜日)には7歳、5歳、3歳の子供の元気で幸せな成長を支えるご縁を感謝する七五三法要が行われます。そして、11月28日(木曜日)は多くの家族や友人らが集まる、アメリカのとてもありがたい祝日である感謝祭(サンクスギビング)を祝います。
このように11月は感謝の心を再発見する特別な行事がたくさんありますが、お念仏に生かされている私たちはご恩報謝に日頃からつとめることによって、大きな安らぎと喜びをいただく事が出来ます。簡単な例えで言えば、日々の生活の中での感謝を表す姿の一つは、食事の前に手を合わせて「いただきます」を言うこと、そして食事の後にもまた手を合わせて「ごちそうさまでした」を言うことです。食前の合掌は浄土真宗の歴史の中に根深い伝統があります。私は最近、田名大正先生が第二次世界大戦時にニューメキシコ州にある戦時敵国人抑留所で書かれたサンデースクールの法話の編集記『佛子生活編』に食前の合掌についての次の説明を見つけました。
これは約75年前に書かれた物ですが、私たちが今日生かされている人生に深い意味を持っていると思いましたので、皆様にご紹介したいと思います。
問 私達が食前合掌するのは、誰が始めたのですか。
答 本願寺の第八世門主である蓮如さま(1415〜1499)が、「私は、佛さまや、先祖の親鸞聖人のおかげで、着たり食べたり、させていただきます」(蓮如上人御一代記聞書一六九)といって、合掌なさったのが、私達仏の子供の食前合掌のお手本です。
問 すると食前合掌は「佛さまが食物をくださるのだ」と、感謝するのではないのですか。
答 佛教では、他の宗教で「神が人間の食物として、他の動物や植物などの全てを造った」と説くのと同じ考え方で、「佛さまが魚鳥の肉をも、私達のために、ととのえてくださった」とは説きません。それで食前合掌も、佛さまにむかって「佛さま、今日のターキーデナー・サンキュー」と、いうような意味は教えません。
問 佛教徒の食前合掌の意味を教えてください。
答 それは「衆生恩」の感謝です。佛教では、私達が今日一日を、無事に生きていくだけでも、世の中の各方面からの、いろいろな援助が、与えられていると、気付くことを教えています。たとえば、一度の食卓にならべられたものにしても、第一に料理をしてくださった人は誰か。それを店から買うために働いた人は誰か。このように数えていって、最後には、その食物それぞれがもっている生命を、私の生命を保つために、失っていることに思い及ばすとき、それらのすべてに対して「おかげさまで、ありがたくいただきます」との感謝を、念佛をとおして表明するのです。それはやがて、自分もまた、他のためになる生活をする、という報謝となって、六波羅蜜の布施行が、芽ぐむのです。
(『佛子生活編』23〜24頁)
現在、浄土真宗の本山である西本願寺から私たちが日頃の生活の中で使えるようにと次の「食事の言葉」が薦められています。この言葉に蓮如上人のご恩報謝の心が現代を生きる私たちの心にも響いてくると思います。
(食前のことば) 🙏
⚫多くのいのちと、みなさまのおかげにより、
このごちそうをめぐまれました。
同音深くご恩をよろこび、ありがたく いただきます。
(食後のことば) 🙏
⚫とおといおめぐみをおいしくいただき、
ますますご恩報謝につとめます。
同音おかげで、ごちそうさまでした。
今月、ターキーデナーであっても豆腐サラダであっても、特別なご馳走を頂く際には、手を合わせご恩を喜びなから、お念仏をとおして感謝の心を表しましょう。
南無阿弥陀仏