まさに異例であった2020年がようやく終わりを迎え、2021年を新たに迎えるにあたって、家に門松やしめ飾りなどの正月飾りをされているご門徒さんもおられると思います。正月飾りに使われる松、竹、梅は、日本ではお祝いの場面でよく登場します。この松竹梅ですが、我が家にあった『「和」の行事えほん』(高野紀子 作)によると次の説明がありました。
「松竹梅は「歳寒三友」ともいわれ、「冬の寒さにたえるたくましい三本の木」という意味があります。
松は、冬も青々としていることから、竹は、雪の重さにも折れないしなやかさから、梅は、早くさいて春のおとずれを知らせる、ということから、めでたい木の代表となりました。(41頁)
松は一年を通して、天気が暑くなっても寒くなってもずっと落ち着いており、常に安定した姿を見せます。竹は冬の嵐や大雨、暴風が吹いても、または重たい雪が積もっても、それに応じてしなり折れないので、柔軟性の強さを見せます。梅の花は寒く暗い冬でも美しく咲き、暖かい春が来ることを知らせてくれます。私は梅の花を見ますと、楽しいことも辛いことも永遠に続くことはないという諸行無常の道理に気づかされます。
この一年間、私たちは新型コロナウイルスの大流行の影響で起きた、様々な心配事や喪失、そして落胆にたえてきました。しかし、この寒く暗い時期であっても、梅のように希望の花を咲かせる木があることを忘れないで下さい。
2020年を振り返ると、20世紀前半にハワイに住んでいた山口松野が書いた次の詩が私の心に響きます。
病める孫は軒場づたひに飛ぶ鳥にもハローと言えり友こひしさに
(Sounds from the Unknown: A Collection of Japanese-American Tanka, translated by Lucille M. Nixon and Tomoe Tana, 113頁)
現在、私たちは家族や友達に会えなかったり、日頃楽しんできたことができないといった現状ですが、このような不便な状況が、山口さんのお孫さんのように、今まで見過ごしていた身近にあるありがたい存在や出会いに気づかせてくれることもあるので、怯むことなく希望を持ち続けることが大切だと思います。
お正月は新しい一年への希望を楽しむ時です。特に現在、最近使用が認可されたコロナウイルス感染予防のワクチンを、これから大勢の人が接種するための計画が進められており、一刻も早いコロナウイルスの終息、もとの生活への復帰、経済復興などの多くの希望が持たれています。私自身も2021年は良い年になるように願うばかりですが、どちらかというと小林一茶の次のことばが今年のお正月には一番ふさわしいような気がします。
雪の山路の曲り形りに、ことしの春もあなた任せになんむかへける
目出度さもちう位也おらが春 一茶
『おらが春』
一茶がここに書いた「あなた」は阿弥陀さまのことを示しています。「ちう位」というのは好き嫌いに流されずに心穏やかに歩んでいく仏さまの中道を表しています。阿弥陀さまのその安定していて、柔軟性がある心は「南無阿弥陀仏」のお名号となって私たちの心まで届きます。阿弥陀さまからいただくお念仏の心はそのままの私の人生を迎えてくれる力があるので、私たちはただ阿弥陀さまに全てを任せればよいのです。
南無阿弥陀仏