子育てはとても挑戦しがいのある仕事です。自分の子供がやんちゃなことをしていると、親としては困りますが、周りの人はそのやんちゃなことする子供を見て笑いながら「お子さん元気ですねえ。」と言ってくれたりします。私の家族は三人の息子がいます。一番下はまだ赤ちゃんですが、そのうちにハイハイしだし、そして歩き始め、走ったり、話したり、動物の音まで真似したりするようになるでしょう。きっとそのうちに上の二人がまだ幼かった頃していたのと同じ様に、日曜日のお参りの最中に歩き回ったり、声を出したりする時が来るでしょう。ある日、一人のよくお参りに来られる方があまりお寺に来ない娘さんに話された言葉をふと耳にしました。「あなたはもっとお参りに来た方がいいよ。先生の息子がやんちゃなことするのを見るのは本当に面白いんだから。」そして、私が隣にいることに気づくと「それと、先生のご法話を聞くのもありがたい。」と急いで付け加ました。
数年前に上の息子の一人がまだ3歳前で落ち着きがない頃、花祭りの法要の真っ最中に綺麗に飾られた花御堂のテーブルの下に潜ってしまったことがありました。息子にとっては、自分を捕まえようとする妻から逃げるのは楽しい遊びで、花御堂のテーブルの左の方から入って、なんと反対側の花まつりのご法話をしていたゲストスピーカーの先生の目の前のところから出てきて、笑いながら妻の方を見ていました。さらに妻が息子を捕まえようとすると、息子はまた素早く花御堂のテーブルの下にもぐってしまいました。テールの下に愉快に座っている息子の姿は私が座っていたお内陣からはよく見えていました。
その日のゲストスピーカーは長年のご経験がある開教使の先生だったので、気にされる事なく堂々と話し続けられました。私が「誰も気づいていないといいなあ」と思いながら、外陣に座っているお参りの方を見ると、何人かの顔の表情でやっぱり気づいていることがすぐ分かりました。心配そうな顔をしている人もいれば、面白そうに見ている人もいました。私がどうしようと心配ながらお内陣に座っている間、妻はようやく息子を花御堂の下から引っ張り出して、もとの席に連れて行きました。この恥ずかしいエピソードは出来ればすぐ忘れてほしいと思っていましたが、最近あるご門徒さんが楽しくその年の花まつり出来事の思い出を話されたので、少なくともまだお一人はあの出来事をはっきり覚えておられるなあと思いました。そして、最後にそのご門徒さんは次のようにおっしゃいました。「仏教会は子供が子供らしく遊べるところで、本当にありがたく思っています。」
先月の花祭りの法要が終わった後、恒例のダーマスクールの出し物のプログラムがありました。プリスクールとキンダーのクラスが「Buddha Loves You」という懐かしい仏教讃歌をステージで歌ってくれました。その仏教讃歌の歌詞は可愛い小動物が次々と出て来るもので、皆な愛らしく、空を飛ぶ小鳥、鳴いている子猫、走り回る子犬、スイスイ泳ぐ小魚などの動きを表現しています。そして各節の最後は「小鳥よ、仏様はあなたを愛している(Buddha loves you little bird)」といった言葉で終わります。その歌に出る動物たちは皆おとなしくて可愛い動物たちです。
プリスクールとキンダーの子供達は皆それぞれ小鳥や子犬のコスチュームを着てステージに出ていて本当に可愛かったです。ただ小魚のコスチュームを最初に見た時、何かおかしいと思っていると、最後の節で子供達は次のように歌いました。「泳げ、泳げ、小ザメよ。小ザメよ、仏様はあなたを愛している。(Swim, swim, little shark, Buddha loves you little shark)」”と歌って、最後に可愛い小魚の小さな口の動きではなく、両手で小ザメが獲物に恐ろしく嚙みつこうとする様な大きな手の動きをしていました。私の息子はその小ザメ役の一人で、出し物が終わって、「小ザメは僕と友達が考えたよ。」と私のところに言いにきました。その子供の発想にも感心しましたが、その発想を肯定できる広い心を持ったダーマスクールの先生達に私はとても感謝しました。阿弥陀如来の大慈悲の心は可愛い小魚でさえ受け入れて下さいます。 ましてや凶暴な小ザメを受け入れてくださるのはいうまでもありません。
南無阿弥陀仏