20代の頃の私は、やるべき事を速く終わらせていち早く次の課題に移ることに楽しみを感じていましたが、40代に入った今は長く継続して行えるアクティビティをよりありがたく思うようになりました。というのも、私は20代後半、宮崎県に住んでいて、その時に趣味として自転車を乗り始めました。ほぼ毎朝早起きをして、仕事が始まる前に海岸沿いを一時間ほど自転車で走っていました。その頃の私は、速く目的地について、速く帰ってきて、速くご飯を食べて、速くシャワーを浴びて、出勤時刻に間に合うように速く通勤することを楽しいと思っていました。そして、そのような忙しい日々を送っていた頃の私は、とにかく短い時間の中で出来るだけ多くのことをこなそうと、物事を早く終わらせるための自分の努力ばかりに意識が向いてしまっていました。
その後、カリフォルニアでの生活が始まり、子供を授かり、特に子供がまだ幼い頃は自転車に乗る回数がめっきり減ってしまっていましたが、ここ二、三年で子供たちも大きくなってきて、子供たちと一緒に自転車で出掛けることができるようになってきました。そして、現在臨時でサンフランシスコ仏教会も担当していますが、サンフランシスコ仏教会にお勤めに行く時は、できるだけカルトレインを利用して自転車で通勤するようにしています。サンフランシスコでのお参りが終わった後に別の用事が入っていない時はサンフランシスコからサンマテオまで自転車で帰ってくることが最近の一つの楽しみになっています。初めてサンフランシスコからサンマテオまで自転車で帰って来れた時は、家まで乗り続けることができたことをとてもありがたく感じました。そう言うこともあり、今では、急いで目的地に着くよりも自分なりのペースで目的地まで乗り続けることの方が楽しくなってきました。
私はこの間、ダーマ・ウィールズ(Dharma Wheels)という20年前に始まった仏教自転車巡礼クラブの自転車巡礼に参加しました。私が参加した巡礼はマリン郡にあるスピリットロック(Spirit Rock)という仏教メディテーションセンターから出発して、所々休憩を入れながら、グレートンにある農場まで行って、そこでランチを食べた後は皆で上座部仏教の尼僧と座禅をし、法話を聞くというものでした。ランチの後、多くの参加者はクロバーデール(Cloverdale)のキャンプ場へと向かって巡礼を続けましたが、私は次の日に仏教会でのお参りがあったので、そこから出発点のスピリットロックへとまた戻って、それから車でサンマテオへと帰りました。
自転車巡礼で聞かせていただいた法話の中で「自分の力で走っていると思った時に、その走っている自分というものをよく見つめてください。その走っている自分にとって真実であるものとは何ですか?」という言葉をいただきました。その言葉を心に留めて走りながら私が気づいたことは、今ペダルを漕ぎ続けることが出来ているのは自分の努力ではなく、たくさんの人のお陰だということでした。走っている道を作ってくれた人たちを始め、巡礼のルートを計画してくれた方々、休憩場所の食べ物や飲み物を準備してくれた方々、そして一緒に走りながら、お互いに助け合ったり、応援しあった法友たちのおかげで私は走り続けることが出来たのです。
このように、仏様の智慧の光は、これまでの私があるのも多くの方々のお陰だという真実を気づかせてくれます。11月20日はサンマテオ仏教会の永代経法要を行います。「永代経」とは「先にお浄土に往生された方々を偲ぶために永遠に行う読経」を意味し、永代経法要が続くというのは仏教会が仏様の光を仰ぐ場として永遠に機能する願いを表しています。
南無阿弥陀仏