今月春を迎えて、3月19日(日曜日)9時半から秋のお彼岸法要をお勤めします。お彼岸は日本の仏教のほぼ全ての宗派が用いており、六波羅蜜を学び、それを実行する期間のことです。六波羅蜜というのはこの迷いの世界(此岸)から仏さまの悟りの世界(彼岸)に渡る人たちが遂行する六つの行いのことを意味します。六波羅蜜を下記に紹介します。
1) 布施(ふせ)
布施というのは見返りを期待せずに心広く与えること、自分の利益をはからずに他人のニーズに応じて与えることを指します。釈迦様は本来、在家の人たちに僧侶や貧しい人々に布施をすることを勧めました。高僧の龍樹菩薩(150-250)は財施(財産を与える布施)・法施(仏法を教え与える布施)・無畏施(畏怖をなくしてあげる布施)の三種を述べており、このことから布施というのは物を与えることだけに限られているわけではないことが分かります。
2) 持戒(じかい)
仏様のみ教えをよりどころとするため、下記の菩薩戒(十の重戒)という生活の原則を支持する仏教徒は多くいます: 1) 不殺生(生きているものを平気で殺すことをしない)、2) 不偸盗(物を盗まない)、3) 不邪淫(不道徳の性行為をしない)、4) 不妄語(嘘偽りの話をしない)、5) 不沽酒(酔っ払わない)、6) 不説過(教団の仲間の悪口を言わない)、7) 不自讚毀他(自慢話をしながら他人を見下すことをしない)、8) 不慳法財(教えと財産を一人占めにして、分け合わないことをしない)、9) 不瞋恚(怒り恨まない)、10) 不謗三宝(仏・法・僧の三宝を馬鹿にしない)
3)忍辱(にんにく)
忍辱というのはいろいろな不都合の実があっても冷静に耐え忍ぶことをいいます。それについて、次の三つのポイントが述べています。(1) 怒らないこと、 (2) 恨みと憎みに執着しないこと (3) 他人の困難を願わないこと。忍辱を実践するために自他や善悪の対立的な考え方を離さないといけません。
4)精進(しょうじん)
精進というのは仏道を求めるために勇気を出して励むことです。そのためには、人を苦しめず助け合うように心掛ける必要があります。精進を実践するためには自己中心的な出来心を控え、よく自分の心を見つめて、自分が苦しみを起こす誤った考え方、言い方、行為によく注意する必要があります。
5)禪定(ぜんじょう)
禅定というのは心を一点に集中させて、注意を乱さないことです。禅定によって、心を静かにすれば、物事をはっきり考えられるようになり、智慧を得ることができます。静かに座ることが禅定に入る代表的な方法ですが、お経を称えたり、歩いたり、写経したりすることも禅定を深める方法です。
6)智慧(ちえ)
智慧というのは本当のことと嘘偽りのことを判断し、全ての衆生が救われる道を聞き分けることです。智慧を得ている心というのは、仏様の悟りの光が常にこの迷いの世界の中を照らしており、解放への正しい道に導いてくれていることに気づくことです。
六波羅蜜という上記に述べてある菩薩行の心掛けと私自身の日頃の生き方を繰り返し見ますと、大きな差があることに気がつきます。私のこの有様に気づきますと、親鸞聖人が述べられたように、善をなかなか実践できない私も常に阿弥陀如来の光に照らされ、悟りの彼岸へ導かれていることを聞くことによって、安心感を得ることが出来ます。私が自分の力で六波羅蜜を完璧に実践することは非常に難しいですが、阿弥陀如来にいただくお念仏によって「六波羅蜜の行を身にそなえることができるのである。」(『浄土真宗聖典 顕浄土真実教行証文類 現代語版』 206頁)
南無阿弥陀仏