仏教の目標が自我を忘れさせることであれば、盆踊りはそのための良い実践法の一つと言えるでしょう。盆踊りはパフォーマンスではありません。踊って自我を忘れることにより、仏法が私たちの人生に働きかけ、物事の見方を違う角度からも捉えられるよう心を転回させてくれるのです。
今の争いが多い世の中において、盆踊りは皆が仲良く心穏やかになる行事です。盆踊りと言えば、私が開教使なったばかりの頃に参加した盆踊りの経験を思い出します。その日、盆踊り開始の時間が近づくと、踊りの先生たちが綺麗な浴衣を着て仏教会の駐車場の真ん中で小さい輪をつくった途端、すぐにたくさんの人たちがその周りに集まりました。参加者の半分ぐらいは他の仏教会から踊りに来ていたようで、初めて盆踊りを見に来た方たちも大勢いるようでした。初めて来た人たちは、輪の真ん中にいる浴衣を着た人たちが踊りを見せてくれるだろうと思った様子で、なるべく真ん中に近づこうとしていました。
踊るのを目的に来た人たちはあちらこちらに点々とわかれ、真ん中に近いところや外側、その間に程よく混じっているようでした。そして、踊りの音楽が始まると、素晴らしい出来事がありました。踊りを経験したことがある人たちは真ん中の先生たちの動きに倣って踊り出し、自然と三つの輪を描くように皆が進み始めました。すると、見物だけのつもりで来た人たちは踊りの真ん中にいるのに気づくと、ある人はパニックになって急いで輪の外に移動し始め、ある人は「これは面白い!」と喜んだ様子で踊りの流れについて踊りに参加していました。この時、初めて一緒に踊りに加わった方々は不安な気持ちから喜びへと変わった心の転回を通して、盆踊りの楽しさを味わう事が出来たと思います。
皆さんは、自分の人生が思う通りにいかない時はどのように反応するでしょうか? 私が自分の思う通りに人生がいっていない時は、イライラして自分の期待に更に執着する傾向があります。そして、自分の行きたい方向に進むようもっと努力すれば、どうにか私の思う通りになるはずだと思いがちです。しかし、本当に自分の思う通りにいかないことに気づくと、今度は不都合な現実から早く逃げようとしてしまいます。このように自分の思う通りの事情を追いかけたり、不都合な現実から逃げたりすることからは、安定した心の安心を得ることはできないと仏様は教えてくれています。
私にとって盆踊りは、追いかけたり逃げたりする私たちの心からそのままの現実を受け入れる穏やかな心に転回する尊いご縁だと思います。先にお浄土に往生した方々の導きを頂きながら、共にこの人生を歩むお念仏の仲間と共に仏様の悲願の船に乗り、心穏やかに踊らせていただきましょう。
南無阿弥陀仏
